GOKUSEN(原作ver)


注意!!
在学中にくっついてます。
そしてビミョーにエロいです。
そういった話がお嫌いな方、実際の年齢または自分は精神的にお子ちゃまだと思われる方は、どうぞ回れ右してくださいませ。
















                     9.フラスコ



ひと気のない放課後の化学室。
山口久美子は今にもぺしゃんこに潰されてしまいそうな理性の在り処を探り当て、懸命に手繰り寄せる。
あがる息をどうしたものかと外した唇は、けれど直ぐに追いつき塞がれる。逃げることはできないのだと知らしめす目の前の危うい欲を孕んだ瞳とまともに渡り合える自信は、今の自分にはない。
ステンレスの実験台の上に置き去りにされてしまったとっぷり底の部分が丸いフラスコと、円錐形の三角フラスコ。それぞれひとつづつ。逸らした瞳に映る磨きぬかれたそれはあまりにも透明だ。
「・・約束がちがう」
ジャージに覆われた臀部は先程からじりじりと硬い床の上を這っている。背中がこつんとコンクリートの壁に突き当たった。背中にじんわりと冷たい感触。もう行き止まりだ。逃げ道はない。
距離を縮めた目の前の詰襟の奥から漂ってくる男の匂い。胸が苦しくなる。
「さ・・わだ」
自分の胸を服の上から弄んでいた男の右の掌が外された途端、久美子は慌ててその手首を掴んだ。「だめ、だ」
少しでも気を抜くと、しっとりと冷たい指先がジャージの裾から滑り込んでくる。
ここ何日かの間に急速に情欲を募らせた男は久美子の身体に無遠慮に触れてくるようになった。
「約束?」
耳許で掠れた声で訊かれ、久美子は困惑する。
「卒業するまで、しない・・・って」
言ったじゃないか。
「ああ」
したな。そんな約束。
息が首筋を這う。
笑っているような物言いに困惑する。
はっ、と気が付いたときには忍んでしまった男の左手が久美子の脇腹を直に撫で上げていた。
久美子はぎゅっと瞼を閉じる。
触れられた途端自分の中にも熱いものが生まれ疼き始める。それに気が付いたのはつい最近。解放できればどれほど楽か。
でも、だめだ、と思う。
「沢田・・」
「・・なに?」
問い返す男の声が熱を持っていることを悟ってにわかに怯む。男も余裕を失いかけているのだ。身体を這う掌が、唇が、息がそれを伝えてくる。
「沢田、だめだ」
「だから。・・・なにが?」
「なにが、って・・・」
囁きあう互いの掠れた声は果てしなく甘い。その甘さが久美子の気持ちを撹乱させる。
くっ、と男の喉が久美子の鎖骨の上で震えた。笑っているのかと唖然とした。
あまりにも不穏当で思わず掌を男の胸に当て、僅かに距離をとった顔を睨みつけた。
「なにがおかしい?」
男は唇の端を持ち上げた。この男のこんな顔はこれまで見たことがない。
「だって、お前さ」
「・・・」
「さっきから、全然抵抗しねえだろ?」
虚を衝かれ目を見張った。唇を噛み、視線を外す。その瞳に再び映るふたつの透き通るフラスコ。
「し・・てる」
「嘘つけ」
男の顔はもう笑ってはいなかった。
確かにそうだ。もしそうなら目の前の男が無傷でいられる筈がない。
とっくに落ちているくせに。
派手な色に染められた前髪の間から覗く男の瞳がそう言っていた。
動けなくなってしまった久美子の背中を男の指先が辿り、探り当てたそれをあっけなく外す。
「や・・・」
右腕だけで強く抱きしめられた。
耳許を唇と舌と吐息がなぞる。
「卒業してからなんて、なんの意味があるんだよ」
胸のたおやかな膨らみはすでに男の左の掌中にある。洩れる息が震えていた。
「俺は、今、したい」
膨れ上がっていっぱいになった思いが溢れ出るように。告げる声はあまりにも切なくて久美子の芯に火を点ける。とうに脆弱になっていた最後の砦はとろりと溶け始めた。
久美子の背中がコンクリートの壁をずるずると滑り落ちる。もはや身体に力は入らない。
ごつんと落ちた後頭部の痛みに顔を顰める間もなく、男の身体が覆いかぶさってきた。頭を抱え込まれ深く絡まる本能だけの獣じみた口づけだ。もう後戻りはできないのだと覚悟を決める。
伸ばした足が実験台の下部に接触した。
揺れる台の上のフラスコがぶつかり合って、かつん、と透明な音を奏でた。



                                      05/3/11UP