NEXT

第七章 つよい…… 3.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 なんで? なんでここに平澤がいるんだ?

 しかも平澤母と、平澤姉妹が一緒にいる。それからえみりも。平澤母はレイさんと話をしている。平澤によく似たお母さん。

 そういやさっき、えみりがまたなにやら問題を起こしたらしいとレイさんが言ってたっけ。え? それと平澤と、どんな関係があるわけ?

 平澤は一瞬だけ視線を合わせたけれど、すぐにふいっと外した。バツが悪そうに。俯いている。

 思わず立ち上がっていた。

「アキ君?」

「あ」

目の前の女性ふたりに声をかけられ慌てて腰を下ろした。「すみません」

 このふたりは今度コマーシャルに出演することになった家電メーカーの広報担当。広報誌に俺のインタビューを載っけるのだそうだ。さすが大手は違う。撮影は別の日にもう済ませてあった。この世界に入ったきっかけだとか、始まったばかりの高校生活はどうだとか、学業と仕事の両立は難しいんじゃないかとか、これまで別の取材で散々話してきたことをまたこの人達に喋らなくてはいけない。これらの質問には同じ答えがちゃんと事務所側から用意されてあるんだ。それをただ口にするだけ。こんな風にわざわざ時間を割かなくても、と正直思ってしまう。でも。笑顔で答える。一応プロのつもりだから。

 それにしても。

 平澤の存在が気になって仕方ない。

 なんで平澤がここにいるんだ。

 で、なんだって視線を合わさない?

 あ。そういやさっき喧嘩したんだっけ。

 もしかしてすんげえ怒ってんのか? やばいな。さっきのはどう考えてもこちらが悪い。

 そっともう一度視線を上げると、レイさんと一緒にドアの向こうへ消えていくところだった。平澤親子と、真山親子。どこにどんな接点があるっていうんだ?

 目の前の女が何か言っている。仕方がないのでいつもの作り笑いで答えていった。

 でも気持ちは。

 消えていった平澤に向いたままなのだ。

 
NEXT

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

HOME
 
/ NOVEL / AKIYOSHI TO KALEN